話題のテキスタイルブランドnowarttの仕掛人に突撃インタビュー! 話題のテキスタイルブランドnowarttの仕掛人に突撃インタビュー!

話題のテキスタイルブランドnowarttの仕掛人に突撃インタビュー!

話題のテキスタイルブランドnowarttの仕掛人に突撃インタビュー!

SHIPS JET BLUE

芸術性の高い“次世代”のテキスタイル(生地)をデザインするブランド、nowartt(ノワート)が今話題だ。まるでアートのような繊細なモチーフはインパクト抜群。それでいて悪目立ちせず、服として自然に馴染むところがこれまでのテキスタイルブランドとはちょっと違う。仕掛人はテキスタイルグラフィックデザイナーの足立豊樹さんと、ファッションデザイナーの野澤広志さん。その唯一無二の世界観はどこから生まれ、どこへ向かっているのか!? 世界も注目するこの二人に早速インタビューしてきました。


――ノワートというブランドですが、まだ耳慣れない人も多くいるかと思います。まずはブランドコンセプトから教えていただけますか。

足立 nowarttはnow artとno war、2つの言葉を組み合わせた造語なんです。現代的な芸術性の高さはもちろん、ピースフルなモチーフを基本に展開しているのが特徴。例えば戦争のためではなく平和のためのカモフラージュ柄だったり、絶滅危惧種の動物をモチーフにしていたり。といっても決してそれを押し付けようというのではなく、あくまでモチーフとしてということ。そこから着想を得た、新しいスタイルのテキスタイルを生み出すよう試行錯誤をしてデザインしています。

――確かに、既存のテキスタイルブランドと比べてもかなり芸術性、デザイン性が高いと思います。こういうことをやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

足立 僕はもともと染色や織りをやっていたのですが、ちょうど大学生の頃にコンピューターが入りだしたんです。僕が作るテキスタイルグラフィックデザインは基本的に手書きなのですが、これからは手書きとコンピューターの良いところを融合させたものが次世代のテキスタイルデザインだろうと。そこからはじまったんです。

――今はお二人で活動されていらっしゃるんですよね。

足立 僕はもともとアパレルに向けたグラフィックやテキスタイルのデザイナーで、野澤さんはファッションのデザイナー。僕が野澤さんの作る服がとても好きで、いつかそこに僕のテキスタイルをのせたいって思っていたこともあって、野澤さんと一緒にタッグを組みました。僕はあくまでテキスタイルのデザイナー。でも生地ってそれ自体が格好よくてもダメで、服として出来上がった時にどうかっていうのが重要なんですよね。そこで野澤さんと話し合いながら創り上げています。僕がこんな絵を描きたいというと『じゃあそれをパンツにするためにこうした方が良い』とか『ボーダーのピッチはこれくらいがいい』とかそういったことを教えてくれる。だからこそ、アパレルに通用するテキスタイルができたんじゃないかなって思いますね。


_プリントの手法も、より色や表情の再現性が高いインクジェットプリントを採用しているんですよね。

足立 はい。今ファーストラインの『nowartt』、レギュラーラインの『ArtPeace by nowartt』と『peacecamo by nowartt』という3つのラインで構成していて、そのうちのファーストラインをインクジェットプリントで展開しています。フルカラーのインクジェットプリントは絵としての表現力は素晴らしいのですが、服になるとどうしてもその強さが邪魔になったりするんです。でも次の世代のテキスタイルを作るためにはインクジェットをどうしても取り入れたかったので、その工夫の仕方を野澤さんと考えて展開しています。レギュラーラインの2つはシルクスクリーンプリントです。

_その世界観はやはりかなり独特です。nowartt のようなテキスタイルメーカーってまだほかにはないですよね。

足立 今まではシルクスクリーンがテキスタイルデザインの主流でしたよね。例えばリバティさんとかマリメッコさんがその代表。洗いをかけて色を落とすということはインクジェットにはできないことで、それぞれメリットとデメリットがあるんです。僕らはインクジェットの精度が上がってきた時に、次の時代の新しいテキスタイルを作りたいという思いがあったから……同じようなブランドがあるかというと、分からないですね。

野澤 ただ、先駆け的な存在であることは間違いないと思います。シルクスクリーンがインクジェットになるというのは非常に画期的なことだったんですよ。ある意味ではテキスタイルデザインの革命だった。シルクスクリーンのテキスタイルって、言ってしまえば50年前からほとんど変わっていないんですよね。ミッドセンチュリーにしてもアロハにしてもそうです。色数もグラデーションも限界だった。そこで新しいテキスタイルが必要だったんです。ハードが変わったのに、それに対応するソフトの代名詞が今はまだない時代。nowarttはそこを目指しています。


――デザインをする上で一番気をつけているのはどこですか?

足立 それは“リピート(送り)”ですね。生地ってロールでできてるじゃないですか。それは何百メーター単位で出来上がる。でも絵は何百メーターも描けないですよね。だから同じ絵を繰り返すことになるんです。つまりそれが“リピート”。絵が連続することを考慮して全体のバランスを整えないと服になったときにすごく格好悪いんです。柄がでたらめになってしまうんですよ。

野澤 ノワートの生地は近くで見ると圧倒的なパワーとインパクトがあるけれど、遠目に見るとバイヤスやボーダーに見えたりするんです。そのバランスの良さっていうのは“おくり”を理解していないとできない。これはすごく難しいことなんです。

足立 テキスタイルにフォーカスしようとするとどうしても柄のアップで見たりするじゃないですか。でも重要なのは人が着た状態でそれが格好いいかどうかということですよね。

――生地のためのテキスタイルデザインではなく、服のためのテキスタイルデザインということですね。

野澤 カーテンならカーテン、ソファならソファ。プロダクトとして完成した時をイメージしながらデザインしないといけない。シルクスクリーンでつくる単調な柄ならいいですが、インクジェットで作る複雑なアートテキスタイルはそこが本当に大事なんです。

足立 テキスタイルグラフィックはモチーフが描かれていない部分がすごく大切なんです。も何も書いてない空白をどれだけ意識して作っていけるか。そこがポイントです。

――モチーフも実に特徴的ですよね。既存でないものを追求しているのでしょうか?

足立 完全に新しいものって今の時代は無いと思うんです。先人たちが作り出した良いものをnowarttのフィルターを通すことで新しくするというアプローチでデザインを考えています。


――伝統的なものを再解釈して新しくするという作業は、どのブランドもやっていること。でもそれが難しい。その完成度の違いをセンスと言ってしまえばそれまでですが、より精度の高いデザインを作るために努力していることはあるんですか?

足立 絵にするものは基本的にすべて実物を見るようにしています。海外にしかないものは海外にも行きます。それと、生地ができあがるまでに10の過程があるとすれば、1?8はなにも描かずに探っていますね。モチーフの意味、色、形、その理由や必然性。そういった細かい部分を徹底的に考える。ディスカッションとリサーチです。トレンドっぽいものを作るのはとても簡単なことで、それは僕らがやるべきことではないと思っています。お客さまがせっかく選んで買ってくれるんだから、少しでも意味のある、説明ができる、上滑りしたものではないものを作りたい。だからこそ、はじめの段階がすごく大切。微妙なタッチが変わってくるんですよ、それで。それと、僕たちが作っているのはテキスタイルであって、主語は服。そこをはき違えてはいけない。その範囲の中で、なにか面白いことがないかということを考えているんですね。

――アイデアがただの“思いつき”ではなく、そこに肉付けがあるということなんですね。

例えば壁紙をデザインするなら、この家ではこういう子供がいて、こういう風に遊ぶんだろうなっていうところまでイメージしてから描きます。それがあるのとないのとでは仕上がりは全然違うんですよ。子供の目線にならないと分からないことはたくさんあるんです。

――近頃はテキスタイルを重視するファッションブランドが増えてきています。その重要性は増しているということでしょうか。

足立 それはそう思いますね。

野澤 今はね、二週間あれば商品をコピーできる時代なんです。単純にデザインや形をマネするだけなら、実物を見なくたって写真で模倣品が作れてしまう。でも素材はそう簡単にはいかないんですよ。これはコピーできない。

――確かに。人気ブランドのデザインの模倣品は数多くありますが、やっぱり決定的に違うのは生地の上質感とか素材感とか、そういった部分ですよね。そこに柄としてのオリジナリティが加われば、さらにマネはしづらくなる。

足立 nowarttは僕だけの力じゃありません。僕がイメージと構成を作って、それを正確に表現してくれるスタッフ達がいて、野澤さんが素材を決める。そしてたくさんのすばらしい職人達の手で生地となる。誰が抜けても完成しないんです。

――お話を聞いて生地を見てみると、そのことがよくわかります。最後に、今後やりたいことや展望などを教えてください。

足立 どんなに素晴らしいグラフィックでも単体であればプロダクトに制限がでてしまいます。でもそこに“リピート”をつけて生地にすることで可能性は無限大になるんです。つまりTシャツ一枚から広大な壁紙まで作ることができる。床やマグカップまで、なんにでも使えるんです。今はライフスタイル全般を豊かにするテキスタイルグラフィックデザインを研究中。楽しみにしていてください。

nowarttのレギュラーラインの生地で作られたSHIPS JET BLUEのパンツ。芸術的なモチーフはシルクスクリーンであしらわれている。
?11','550/nowartt × SHIPS JET BLUE

こちらはnowarttのアイコン的デザイン、シルクスクリーンプリントのピースカモ。シンプルなタッチだが版を重ねることで立体感を演出。迷彩風でありながら無骨さはなく、どこかハッピーなムードに仕上がっている。

?18','900/nowartt × SHIPS JET BLUE

ピースカモをモチーフにしたオリジナルのバンダナも人気アイテム。?1','050/nowartt

足立さんが作るデザインはすべて手描き。ひとつひとつモチーフを描き、それをレイヤードすることで一枚のテキスタイルが完成する。タブレットの画面に映っているのは壁紙やソファにnowarttのテキスタイルを乗せたイメージ。テキスタイルデザインの可能性は無限大と足立さんは語る。


パリで開かれた個展で足立さんが発表した作品『無限の形』。煙をデジカメで何百枚もおさめ、それをコラージュし、さらに手書きで鱗やツメを表現。デジタルとアナログを融合させたスタイルは、nowarttの世界観にも通じている。

nowartt

アートディレクター兼デザイナー足立豊樹によるヘリテイジ×モダンアートを取り入れたテキスタイルグラフィックブランド。時代を問わず今を感じさせるアート『now art textile』、平和を感じさせるアート『no war textile』、この2つのコンセプトを融合しテキスタイルグラフィックを創造している。

足立豊樹

nowartt アートディレクター兼デザイナー。2010年よりテキスタイルグラフィックブランドnowartt(ノワート)を立ち上げる。現在、世界各国ハイコレクションブランド、アウトドアブランド、スポーツブランド、バックブランド、その他様々なカテゴリーに対してテキスタイルグラフィックを提供。

野澤広志

nowartt デザインプロデューサー。Lovege メンズデザイナー。2011年よりスタートしたオーガニックブランドLovege(ラベージ)のメンズデザイナー。Lovege by nowartt としてオーガニックコットンを中心としたコラボレーションブランドを世界のセレクトショップで展開。