現代解釈のヘビーデューティスタイルを提案する今季。そのひとつとして、米国〈シエラデザインズ〉が生んだ不朽の名作60/40マウンテンパーカをフィーチャーします。ここでは、改めてのおさらいとともにSHIPSとのストーリーをご紹介。併せて、クラシカルにしてモダン、無骨でありながら都会的に仕上げた別注モデル&着こなし術をお届けします。
カリフォルニア州バークレーのアウトドア用品店で働く2人の青年によって1965年に創業。長年のフィールドライフで培ったノウハウとアイデアを注ぎ込んだ、機能的で高品質なアパレル&ギアが評判に。'68年、コットン×ナイロンを約60:40の比率で織り上げた独自のファブリック、60/40クロス*を採用したマウンテンパーカを発表して大ヒット。ハイテクな防水透湿素材を使ったシェルジャケットの原点であり、クラシックアウトドアを象徴するアウターとして現在でも確固たる支持を集める。
*「60/40クロス」……高強度コットン60%、高密度ナイロン40%からなるブランドの看板ファブリック。濡れるとコットンが水分を吸収・膨張して生地の微細な織り目をふさぎ、ナイロン自体の撥水性能と相まって雨の浸入をブロック。一方、乾いた状態ではコットン本来の通気性によってジャケット内の湿気を排出して蒸れを軽減。また強度も高く、化学繊維100%より耐火性に優れるなど、往年の機能素材として知られる。通称“ロクヨン”。
SHIPS創業の1975年に日本での正規販売を開始した〈シエラデザインズ〉。当時から現在までショップに立ち続け、街のリアルを現場で体感してきた生き字引である雨宮教夫が、あの頃を振り返ります。そしてメンズファッションの酸いも甘いも噛みわける彼が考える、60/40マウンテンパーカの魅力とは?
「1975年に『メイド イン U.S.A カタログ』が出版され、アメリカ西海岸の若者を中心とするバックパッカーたちの愛用品の数々が紹介されました。このとき、過酷な自然環境と対峙する“ヘビーデューティ”という言葉や概念が日本に輸入されたのだと思います。雑誌『メンズクラブ』も盛んに打ち出し、都内の学生を筆頭にブームになりました。代表的なアイテムはアウトドアのダウンジャケット&ベスト、ヘビーフランネルのシャツ、無骨なワークブーツや登山靴。そこに〈シエラデザインズ〉の60/40マウンテンパーカがありました」
「時を同じくして’75年、SHIPSの前身となったミウラ&サンズが渋谷の道玄坂にオープンしました。品揃えは、ずばりアメリカ西海岸。当初はジーンズを主役に、先に挙げたようなヘビーデューティなアイテム、〈シエラデザインズ〉ではマウンテンパーカとダウンパーカを取り扱っていた記憶です。おそらくマウンテンパーカが3万円くらいでした。道玄坂の町中華のラーメンが当時250円で、今その店のラーメンは700円。2.8倍なので、現在の感覚では8〜9万円ほど。ですから、誰もが買える服ではなく、熱心な服好きがアルバイト代を貯めたり、どちらかというと裕福な方が購入されていたように思います」
「ブームが始まった頃は、マウンテンパーカ&ネルシャツ、ジーンズにワークブーツなど、ザ・アメカジなコーディネートが主流。そのブームがピークを迎えた’77〜’78年になると、ちょっとしたコート代わりにするビジネスマンも増えました。金ボタンの紺ブレ、オックスフォードシャツをタイドアップして、チノパン、足元はクラークスやコールハーンといった具合。機能的なアウトドアウェアを街着にするファッションは今でこそ当たり前になりましたが、その草分けが〈シエラデザインズ〉だと言えます」
「それ以降、現在まで支持されているからすごいですよね。誕生から50年以上ずっと変わることなく存在しているのは、それだけ完成されているということ。最新のハイテク素材には敵わないものの、雨を弾いたり、蒸れにくかったり、破れにくかったり、普段のタウンユースには必要十分な機能性があります。あと個人的には、マチ付きのフラップポケットやハンドウォーマー併設のWポケット、背中のマップポケットといったディテールにグッと来る。女性にモテるためではなく、そうした男のロマンを着る服だと思います」
「カジュアルはもちろん、あらゆるスタイルに対応できる懐の深いアウターなので、インナーやボトム次第で時代感を表現できるのも魅力でしょう。今年なら、こうしてスーツと合わせるのもいいですね。あとは、大きめを取り入れるのが気分。オーバーサイズを選んで、コートのようにガバッとラフに羽織りたいですね」
10年ぶりとなるSHIPS別注は伝統のメイド イン U.S.A。全5色の豊富なバリエーションから
3カラーをピックアップし、今季らしいSHIPSスタイルを提案します。
カレッジモチーフのスウェットにチノパン、足元にはワラビーブーツと、王道のアメリカンカジュアルでコーディネート。ブランドが日本に上陸した当時である1970年代の中頃に多く見られ、また今も色あせない基本のスタイルです。
マウンテンパーカの裏地のカラーをニットで拾った、まとまり感ある完成度の高いスタイリングに。5ポケットジーンズではなくクリース入りのデニムスラックスを合わせれば、ラフになりすぎない大人の休日カジュアルに仕上がります。
アウターをはじめ、全身をネイビー&ブルーで統一。同系色で揃えても素材感や濃淡の違いでコントラストが生まれ、単調に見えない奥行きある着こなしが叶います。ヘビーデューティなマウンテンパーカも、都会に似合うシックな装いに。
ブランドのシグネチャーアイテムである、60/40クロスを採用したマウンテンパーカ。その完成されたデザイン&ディテール、昔ながらのアメリカンサイズを活かしたまま、表裏のカラーを指定して定番モデルにはないSHIPSだけの配色へとカスタマイズ。また生地&縫製を含め、すべてメイド イン U.S.Aにこだわりました。