SHIPS WOMEN
JOURNAL
木曽川のほとりの濃尾平野は紡績から染色、縫製までの工程を総合的に生産できる、日本有数の繊維産業のエリアとして知られています。たくさんの工場が軒を連ねるこのまちで、それぞれの専門性を認め合ってタッグを組み「ヴィンテージ加工」に向上に励むふたつの会社がありました。今回SHIPSが〈オーダブ〉とのコラボレーションを展開するなかでこだわったのが、ヴィンテージの風合い。強いこだわりをどのように「染め」と「プリント」で叶えてくださったのか、バイヤー中山と現地を訪れました。
Updated 2022.07.06
田代浩一郎さん田代ニット加工代表取締役社長
伊藤良太さん丸昇営業
中山良子SHIPSウィメンズバイヤー
Odub
2021年よりスタート。"A Fusion of Vintage and Elegance"(ヴィンテージの再現のなかにあるエレガンス)をコンセプトに、膨大なヴィンテージアーカイブから厳選したスペシャルなアイテムを研究し最高の技術で再現。どこか品を感じさせるアレンジで現代にマッチする新たな価値創造を目指す。
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CLOSER TO VINTAGE
まずは訪れたのは今回のコラボレーションにおいて、カットソー生地の染色をご担当いただいた田代ニット加工。ニットという名前がついているものの現在はカットソー生地の染色がメインで、なかでもバイオやケミカルなどの特殊加工を得意とされているんだそう。
ーまずは今回の商品をこのふたつの工場が担当することになった経緯を教えてください。
Odub : もともとヴィンテージが好きなので、生地とプリントがトゥーマッチだったり、大袈裟な加工で仕上がってくることに抵抗があったんです。国内外のさまざまな工場とやりとりをするなかで、染めやプリントの絶妙なニュアンスを表現してくれるのは国内の工場に多いなと気づきました。指示書に数値で書けない部分なので感覚が共有できる工場との仕事がすごくありがたいんです。
中山 : お気持ち、よくわかります! 私もつい「いい感じに」と指示を出してしまうのですが、それで思ったより大袈裟な加工であがってくることももちろんありますし。
Odub : その点、丸昇さんは絶妙な匙加減を汲み取ったヴィンテージ風プリントをしてくれるので、もう15,16年ほど前からお付き合いをさせていただいているんです。
伊藤 : Odubさんはヴィンテージに詳しく、アーカイブもたくさんお持ちなので、現物をお借りしながらどのようにリアルに再現するかご相談がしやすいんです。今回のお話はプリントはもちろん、ボディの色もキーになってくるので、バイオ加工に精通した田代ニット加工さんをご紹介させていただきました。
田代 : 今回の商品は「顔料染め」という生地の上に顔料を乗せて、それを色止めで接着させる染め方と、「反応染め」という布のうえで化学反応を起こす染め方の2種類を使っています。
伊藤 : 染めとプリントは相性が大切で、同時にやってこそいいものが生まれると思っています。新品っぽいボディにヴィンテージプリントを載せても違和感が出てしまうんですよね。味があるボディにいいプリントを載せてこそ輝くので、田代さんと一緒に考えながら作っているんです。圧倒的な信頼があるので。
田代 : そう言ってくれるんですが、まだ自分の中でケミカル加工は完全なものではなくて。温度管理とワッシャーの回転数、薬品の管理と投入のタイミング、そのすべてが一致しないと同じ色ってつくれないんです。同じ色にならないと商品としてはB品になりますからね。
中山 : その管理って機械ではできないものなんですか?
田代 : 水ってすごくて、95度と96度では全然違う色になってしまうんですよ。温調計というものがあるのですが、例えば同じ数値を示していても周りの温度で誤差が出てしまう。なので温度や湿度を加味しながら人間が最終的に微調整しています。
中山 : 繊細なんですね。
Odub : ロットが変わると多少の色むらや色ぶれが発生するのはここなんですよね。ヴィンテージ加工ものって本当に難しくて、一見普通に見えてもそこにいろいろな職人技が入っているんです。
丸昇 : ただ田代さんにお願いするとほとんどブレがないんです。
田代 : 最近やっと目標の温度が見つかって、ここから1年試してみて、あと2,3年したら自分のなかでケミカル加工が完成すると思うんだけど…。だから本当は今日じゃなくて納得いく状態になってから取材に来てほしかった(笑)。
今回のコラボ商品の顔料染めをしているワッシャー。ワンピースなどの長い反物は釜の中で絡まないように、細いワッシャーで染める。
原反(まだ裁断や加工をしてない生地)を染める機械は8層に分かれて下洗い、染色、柔軟などを行う。
田代 : ここがいわゆる「ビーカー」。色の調整ですね。
中山 : いつも希望の色をパントーンで指示させていただくのですが、どのように再現していただいてるのですか?
田代 : その色を見て職人が調合しています。生地によって色の出方が違うので、過去の配合を参考にできないんですよ。なので1色を出すのに、4,5回は微調整することが多いですね。
中山 : 今度から遠慮してビーカーをたくさん出せなくなっちゃう(笑)。再現するのが難しい色はありますか?
田代 : 茶色やカーキ系ですね。ちょっとブレるとチャコールになったり、本当に調整が難しい。うまく茶色を出したい、という願いを込めて、染色工場には「茶」の字がつくところが多いんですよ。
色がブレていないかどうか、周りの光に影響されない暗室で確認する。
染色を終えた今回のコラボレーションの生地をチェック。
伊藤 : 今回の顔料染めはピグメントという加工なのですが、一般的に色落ちしやすいと言われている顔料染めでも田代さんのものは本当に色落ちしにくくて。
田代 : バインダーと言われる色止めの量とベイキング、あとは前洗いに工夫があるのですが、企業秘密です(笑)。
中山 : 本当に知らないことが多く、勉強になりました。
田代 : ただ裏側を知りすぎちゃだめですよ。そうすると無理を言えなくなっちゃう。
Odub : 逆にそういうリクエストがあるからみんなで頑張って、いいものが完成しますからね。
CLOSER TO VINTAGE
次に向かったのは丸昇の事業のなかでプリントと製版を担当している工場。ヴィンテージ加工だけではなく、箔プリントや蓄光、フロッキープリントなどさまざまな特殊プリントを得意としています。
Odub : 丸昇さんは特殊プリントに関して日本で3本の指に入ると思っています。現場に若い職人さんが多く、みなさんファッションが好きなので感覚の共有がしやすくて。
伊藤 : ヴィンテージプリントって難しいんですよ。知らない人からすると何がいい基準なのかわかりにくいと思うのですが、知識がある人からはリアルかどうかがすぐに見抜かれてしまうので。15年ほど前にヴィンテージ加工が流行ったときから今まで、常に研究して知識を貯めています。自分自身も古着屋を周って、再現できそうなプリントを見つけては職人と相談しながらトライすることも多いですね。
中山 : 企業からのオーダー商品をつくる際も、実際にヴィンテージを見ながらプリントを再現することが多いんですか?
伊藤 : もちろん急いでるお客様には過去の加工例から選んでいただくことが多いのですが、商品を持ち込んでいただいてイチからつくる方がオリジナリティは出ますし、おもしろいと思います。
シルクスクリーンは職人が1枚1枚台にTシャツを通し、刷り上げていく。
シルクスクリーンとインクジェットを1台で仕上げられる機械。日本に数台しかないんだそう。
ー今回のプリントはどのように決めたのでしょうか。
中山 : Odubさんがたくさんプリントのサンプルをお持ちなので、それを見ながら。ヴィンテージにしか見えないリアルなものが多いので、目線合わせしやすいんです。
伊藤 : Odubさんは古着に詳しいので、リアルなサンプルしか持っていってくれなくて。大袈裟な加工には見向きもしてくれないんです(笑)。
Odub : 今回のコラボレーションでお願いしたのは染み込みプリントなんですが、通常の染み込みと濃色染み込みの2種類ありまして。それを細かく調整しながら仕上げてもらっています。シンプルな1色刷りですが、実はかなりこだわっているんですよ。
中山 : 薄オレンジのボディとスミ黒の2色で、ともに白のプリントですもんね。黒に載せるときは工夫がいるんでしょうね。
伊藤 : そうですね、白のプリントから黒が透けて出るように調整しています。
Odub : 薄い色の染み込みも難しいんですよ。量販店だと避けることが多いと思います。
伊藤 : 例えばかすれ加工って、実際に職人がかすれるように刷ることがほとんどだったのですが、それだとWEBで買う方が多い今の時代は「写真と違う」とクレームに繋がってしまうんですよね。なので一度サンプルを作り、スキャンして同じかすれを表現したりしています。
Odub : 一点もののおもしろさはあるのですが、B品にはしたくないですしね。
シルクスクリーンの版は倉庫に1万点ほど保存されている。1年追加の依頼がなかったらまっさらな紗割りという状態に戻す。
紫外線で固まる特性を持つ「乳剤」。
データを印刷したポジフィルムを乳剤を塗った紗割りに貼り、紫外線を当てて洗うことでシルクスクリーンの版が完成する。
伊藤 : 今回のプリントの版があるので、せっかくですからシルクスクリーンを体験してみませんか?
中山 : いいんですか? ぜひお願いします!
プリント歴8年の職人、松本雅弘さん。丸昇のなかで1,2を争う腕を持つ。
伊藤 : プリントには主にインクジェットとシルクスクリーンの2種類があって、インクジェットはコピー機のように一気にすべての色を印刷するもの。シルクスクリーンは1色ずつ重ね塗りするので、仕上がりがよりきれいなんです。ただ手作業なので、ずれないように細心の注意を払いながら作業しています。
松本 : まずTシャツを両面テープのついた台に製品台に通します。このとき必ず清掃をし、首のリブを台から落として凹凸のない状態に。ちょっとでも段差があると滲みの原因になりますし、Tシャツがずれるとプリントもずれてしまうので。
中山 : 実際にやってみると、綺麗にTシャツを台にセットするのが難しいですね。中心がずれてしまいそう。
松本 : 左右の折りじわと台のバランスで調整するんです。
中山 : この蛍光ピンクでチャレンジしたいです。
松本 : いいですね。今回はボディの色が薄いので大丈夫なのですが、濃色のTシャツに刷るときは2周、3周してようやく1周分の色が出るので難しいんです。それではまず版の表面に1回刷れるだけの分量のインクをのせます。
中山 : これくらいでしょうか…。
松本 : そうですね。何グラムです! と言えないので経験値になってしまうんですが。インクを載せたらスクイージーで刷り上げ、刷り下ろします。最初は力を入れず、下ろすときにしっかり力を入れて。
中山 : どうして往復させるんですか?
松本 : 1回だとかすれている場合があるんです。
松本 : 上手にできましたね!
中山 : こんなに難しいんですね…。Tシャツを台の上で整える作業がまさに職人技でした。
SHIPS WOMEN 2022
今回のコラボレーションアイテムをCHECK。
Odub×SHIPS マキシワンピース
各 ¥14,960(inc.tax)
Odub×SHIPS キャンバス キャップ
各 ¥6,050(inc.tax)
Odub×SHIPS ロゴプリントTシャツ
各 ¥7,480(inc.tax)
Odub×SHIPS キャンバス トートバッグ
各 ¥7,150(inc.tax)
INFORMATION
7月8日(金)より全国のシップス店舗にて
Odub×SHIPSのコラボレーションアイテムを発売。
詳しくはこちら
  • Photography_Jun Nakagawa
  • Interview & Text_Reiko Matsushita
  • Design & Development_maam.inc
  • Edit_MANUSKRIPT
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