今季誕生したSHIPSスーツの新モデル「リーブルマン」はフレンチテーラリングに
インスパイアされた、これまでとはひと味違うデザインが特徴。
その魅力をドレスウェアを専門とするエディター・小曽根広光さんが
じっくりレビュー。同じくスーツには目がないプレス・河野との談義が始まります。
今季誕生したSHIPSスーツの新モデル
「リーブルマン」はフレンチテーラリングに
インスパイアされた、これまでとはひと味違う
デザインが特徴。その魅力をドレスウェアを
専門とするエディター・小曽根広光さんが
じっくりレビュー。同じくスーツには目がない
プレス・河野との談義が始まります。
1984年生まれ。雑誌「MEN’S EX」編集部を経て2018年に独立。スーツをはじめとするドレスクロージング&ビジネスウェアを専門として、雑誌を中心に活躍。スーツスタイルは“電車内で浮かない服装”がモットー。
1991年生まれ。ドレスコードのないプレス勤務ながら、積極的にスーツを愛用。コロナ明けのピッティ初探訪を夢見て仕事に励む毎日。SHIPS公式YouTubeチャンネル「SHIPS Channel」で動画シリーズ「河野が行く」を好評連載中。ドレスクロージング全般を担当。現在プライベートではゴルフに夢中。
いや〜これは面白い!
シップスさん、なかなか攻めてきましたね。
そうなんです。
ここ数年の大潮流といえば“フレンチ”。
お客様からもフレンチテイストのアイテムを求めるニーズが高まっていましたので、オリジナルでフレンチスーツを開発しました。
このフィッシュマウスラペルがいいですよね。
カンプス・ドゥ・ルカやフランチェスコ・スマルト、今はなきアルニスといったパリのビスポークテーラーに特徴的なデザインですけど、現在の日本ではほとんど見られないのでは。
ですね。
モデル名は「リーブルマン」。
フランス語で“自由に”という意味です。
なるほど。
既成概念に囚われない、自由な発想でスーツを楽しんでほしいという思いを込めて名づけました。
フィッシュマウスのほかに、ドロップ6.5と比較的ゆとりをもたせたシルエットや、ハーフ毛芯による軽やかな仕立てを特徴としています。
僕も今、実際に着てここでお話ししているわけですが、確かに着心地は非常に軽いです。
ベーシックな生地なのでもちろんビジネスにも着られるんですけど、今日みたいにニットの上へサラッと羽織るくらいが今の気分かもしれません。
あと、スーツでパッチポケットも珍しいですよね。
それも“自由さ”を表現するための工夫です。
切りポケットよりもスポーティなのでカジュアルにも振りやすいですし、タイドアップしたときはアクセントになって、抜け感というか、リラックスした雰囲気を演出できるんです。
あと、パッチポケットならジャケット単品で着ても大丈夫ですよね。今日は僕も、ジャケットだけを使ってコーディネートしてみました。ストライプスーツのセパレート使いは難しい気もしていたのですが、
実際やってみるとジャケットに適度なカジュアル感があるから意外とすんなりハマります。シルエットのバランスも普通のスーツとはちょっと違いますね。
そうなんです!
ウエストのシェイプを緩めにしてゆとりをもたせているのですが、
ただ寸法を大きくするだけではなくて、ゆとりが前後左右に分散するよう設計しています。それが、おっしゃるような“程よいカジュアル感”につながっているというわけです。
物理的な着心地の軽さもありますし、ドレスアップもカジュアルダウンも、セパレート使いも簡単にできるというハードルの低さも気楽さの要因。一方で仕立てはあくまで上質なテーラードなので、カジュアルブランドのリラックスセットアップとも違った魅力があります。本当、これまでにないバランスですよ。
そう言っていただけると嬉しいですね。
普通のスーツよりも、かなり気楽に袖を通せるのがいいですよね。
着るときに身構えなくていい感じがします。
最近はスーツ不用論も囁かれていますが、個人的には“不必要”であっても“不用”ではないと思っています。
おっしゃるとおりです。
やはり男を最も格好良く見せてくれる服のひとつですし、カジュアルウェアにはない高揚感もある。純粋に着て楽しいものですから、スーツを“不用”の一言で片付けてしまうのはもったいないと思うんですよね。
だからこそ、この「リーブルマン」のような気楽に着られるスーツが今にふさわしいのかもしれませんね。すごく刺激的な新作でした!
「フレンチをテーマにしたスーツということで、フランスのファッションアイコンたちを参考にしてコーディネートを考えてみました。こちらはジャン・ポール・ベルモンドのスタイルが元ネタ。1970年代に撮られたモノクロ写真で、おそらくグレーフラノかツイードと思われるスーツにハイゲージのタートルニットをインした着こなしを確認できるのですが、これがなんとも小粋。至極シンプルなのですが、フレンチの真髄といわれるノンシャランスを感じます。というわけで、こちらのコーディネートもシンプルを基調にまとめました。ただし、タートルニットの上に同素材のカーディガンをレイヤードしてアンサンブルにしているのがちょっとしたポイントです。サッパリしすぎずヒネリが効いた印象になりますよ」
「こちらはジャック・タチのスタイリングを参考にしました。首元に効かせたドットのプリントスカーフをアクセントにしています。もともとの装いはジャケパンスタイルなのですが、今ならスーツのほうがスッキリ見えて洒落ていると思いますね。スカーフはあまりグルグル巻くとトゥーマッチに見えるので、できるだけ無造作に、サラッと巻いたほうがフレンチ的。最近はスーツのカジュアルダウンというとニットやポロシャツを合わせるのが圧倒的主流ですが、こういうクラシックなノータイスタイルも久々に新鮮ですね。足元はこの秋冬、注目が高まっているサイドゴアブーツを合わせました。ローファー感覚で脱ぎ履きもイージーですし、ミニマルなルックスで服装がピリッと引き締まると思います」
「フランスのファッションアイコンと呼ばれる人は数多くいますが、ドレスアップに関してはジャン・コクトーが大好きです。スーツスタイルの黄金期といわれる1920〜30年代に全盛期を迎えていただけあって、当時の写真がたくさん残っているのですが、どれも別格にエレガントです。なかでもグレースーツの着こなしが個人的には印象的。時代柄かもしれませんがシャツは大抵無地で、ネクタイ使いで華を添えています。そんなムードを意識して、今回は白無地シャツにパネルストライプのタイでアクセントをつけました。グレーのベースにボルドー&ホワイトというありそうでない配色がいいですね。今年はフレンチの流れでニュアンスカラーが人気ですが、そういう旬のムードも表現できると思います」