SHIPS MEN
FEATURE
失われた過去のアメリカに思いを馳せ、世代を超えて継承していくWYTHE(ワイス)は、いまSHIPS MENが注目しているブランドです。いま、ニューヨークでも注目のデザイナー、ピーター・ミドルトンさんに尋ねたブランドのこと、そして個人的ないくつかの関心事から、WYTHEの魅力をのぞいていきましょう。
Updated 2023.12.20

テキサス生まれのデザイナーは
真のアメリカーナを探す

「ブランドを一言で表すなら、僕の視点で描くアメリカーナと言いたい」と語るのは、アメリカのテキサス州オースティンで生まれ育ち、テキサスといえばな大衆ビール「Lone Star」とカントリー・ミュージックをこよなく愛するピーター・ミドルトン、31歳。小さい頃から自分のブランドを立ち上げることを夢見ていたという氏が、前職であるラルフ・ローレンにデザイナーとしてまだ在籍中の2019年に、ニューヨークのブルックリンの自宅からひとりでに始めたのが<ワイス>。一型のみのボタンダウンシャツでスタートして、4年足らずで今年9月にはローワー・イースト・サイドに路面店を出してしまうほど急進的に注目を集めるブランドに成長しました。

秋晴れのとある日、<ワイス>のレザージャケットにフランネルシャツとカウボーイブーツ、リーバイスのヴィンテージデニムという出立ちで現れたピーター。彼のブランドを体現するスタイルとは裏腹に、「先週も平日に数日休みを取って行ってきた」と言うように、時間を見つけては自然に足を運びロッククライミングなどを楽しむ大のアウトドア好きで、その素性がますます気になるばかり。彼の視点で描くアメリカーナを探るべく、とある1日に同行しました。

趣味を楽しみ、スタイルにこだわるデザイナーのピーターに、今気になっているキーワードを挙げてもらいました。それはファッションから食や音楽まで。その集積こそが、WYTHEのアイデンティティです。

「アメリカ合衆国の文化」を表す“アメリカーナ”は、<ワイス>に欠かせないコンセプト。「東海岸と言えばアイビーやプレッピー、西海岸で言えばリーバイスやフランネルなど、これら全て“アメリカーナ”なんだけど、僕が<ワイス>で追求したいのは、東海岸と西海岸だけでなく、その間にある“アメリカーナ”なんだ。例えばテキサスのカウボーイブーツをはじめ、ウィスコンシン、ネブラスカ、オレゴンなどその土地土地で生まれたスタイルに興味があるんだ」。

「フランネルシャツは自分のスタイルに必要不可欠な、アメリカーナの核とも言えるピース」と語るように、<ワイス>でも毎シーズンリリースしている定番品で、カラーパターンやシルエット、ボタンなどのディテールまで、今でも増え続けるという莫大なヴィンテージのフランネルシャツのアーカイブからサンプリングする。工場と対話を重ね、ヴィンテージ特有の洗いざらしのコットンの質感を再現するなど、フランネルシャツの魅力を追求しています。

オフィスはブルックリンのグリーンポイントにあって、近所にある人気ピザレストランが展開するピザスタンド「Paulie Gee’s Slice Shop」はよく行くランチスポット。「お気に入りは同店の看板商品であるモッツアレラ・チーズとペコリーノ・ロマーノのピザにホットハニーがかかった『The Mootz』だね。チーズと甘辛い蜂蜜の相性は抜群で、毎回必ず頼むよ。一枚じゃ物足りない人には『Sausage』もおすすめ」。

堆く積まれたヴィンテージアーカイブの山の隣に雪山用の登山靴やスキーブーツがあるように、休みが取れると愛車のGeepを2-3時間走らせアップステート・ニューヨークに行き、春〜秋にかけてはロッククライミング、冬はアイスクライミングやスキーなどを楽しむピーター。「<ワイス>にヴィンテージのパタゴニアやアークテリクスなどのアウトドアギアを合わせるスタイルは、寒さの厳しい冬のニューヨークをスタイリッシュで快適に過ごせてお気に入り」。

生粋のフロム・テキサスなピーターにとって、カウボーイブーツは自身のルーツでもある。「<ワイス>のルーパーブーツは、カウボーイブーツの生産の中心地として知られるメキシコで4代に渡って続く工房に手作業で作ってもらっているんだ。2年間ですでに一度ソールを張り替えているんだけど、またそろそろ張り替えなきゃいけないくらい毎日履いてしまうんだ。アッパーのスウェードに大分味が出てきた。しっかり手入れすれば、ずっと履き続けられるし、表情もどんどん良くなるよ」。

数あるアメリカ文学の中でも、F・スコット・フィッツジェラルドの著書を愛読するピーター。「アメリカが持つ理想主義だったり、富やお金への執着心というものをリアルに描き、その富がもたらす喜びだけでなく、悲しみ、孤独を描写する彼の著書が大好きなんだ。<ワイス>の服作りにおいて、ジョージア・オキーフの色使いにはとてもインスピレーションをもらっている。元々ニューヨークを拠点にしていた彼女が、次第にニューメキシコに魅了されて晩年を過ごしたという人生にも惹かれるんだ」。

毎朝スタジオに来るとまずはレコードをかけて1日を始めるピーター、幼少期から自然に聞いていたカントリー・ミュージックは今でもよく聴く。「生けるレジェンド、ウィリー・ネルソンの『Willie and Family Live (1978)』と、大人気スター、ドワイト・ヨアカムの『Live from Austin,TX』を最近はよく聴いてるね。親父から譲り受けた<Thorens>のターンテーブル、<Marantz>のレシーバー、<KLH>のスピーカーで聴くカントリー・ミュージックは格別だよ」。

9月にブランド初となるフラッグシップストアをオープン。「元々スタジオで使っていた棚や机などをここに持ってきたんだ。おかげでスタジオは大分散らかってしまったけど、お客さんに直接会えて、直にその反応や<ワイス>の服が実際にどうフィットするのかを見聞きできて、店を開いて本当によかったと思ってるよ。今日は店頭のウィンドウにクリスマスツリーを設置するんだけど、これからも自分たちのペースでアップデートしていくからお楽しみに!」。

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