SHIPS 50th ANNIVERSARY

チノパン

2025.04.11

SHIPS 銀座店誕生とともに
ファッションアイテムになった
ドレス仕立てのチノパン

remember
me?
column.

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1977年10月10日、東京・銀座にオープンしたSHIPS 銀座店で、オープン当初から人気を集めたのがアメリカから輸入された“チノパン”でした。チノパンは日本での通称で、正式には「チノーズ(chinos)」。軍服などに用いられた「チノクロス」と呼ばれる綾織りのコットン地で作られたパンツがチノパンです。カーキが代表的な色で、その色から最近のアメリカでは「カーキ(khakis)」と呼ぶことも増えました。
当時のSHIPS 銀座店で人気が高かったのはいわゆる“ドレスチノ”と呼ばれるモデルです。軍用のチノパンとは違い、テーラード仕様の縫製で、SHIPSが主軸としていたブレザーやジャケットとも好相性でした。中でも人気を集めたブランドが、トムソン(THOMSON)でした。東京・三軒茶屋でセレクトショップ、SEPTISを営む玉木朗さんは、開店当初のSHIPS 銀座店でトムソンのチノパンを購入しました。
「あの当時流行っていたパンツはリーバイスの646のフレアやサッスーンなどのファッションジーンズでした。僕、基本アイビーでしたから、トムソンのチノパンが出てきた時は本当に嬉しかったですね。このパンツにボタンダウンシャツを着て、それでOKなんだと思いました。当時、僕はアメ横で働いていて、隣がミウラでスタッフとも顔見知りでした。銀座にSHIPSがオープンすると、ロン毛のスタッフたちまでいきなり髪を切っちゃってびっくりしました」と玉木さんは笑います。
トムソンをはじめとしたアメリカからのチノパンはSHIPSのヒットアイテムになりましたが、輸入品のためすぐには追加できないということが課題でした。そこで78年にはSHIPSオリジナルレーベルのチノパンの開発に取りかかります。そのチノパンに携わったのが、現在バーンストーマーで顧問を務める海老根行雄さんです。
「実はトムソンのチノパンはマシンメイドですが、オーダー品的な要素がたくさんありました。ベルトループも『巻き縫い』でステッチが(表に)出ないようになっていました。こんな縫製ができる機械なんて日本にはなかなかありませんでした。縫製ができる工場を探し出し、生地も全部オーダーで織りました。もちろん製品を分解して型紙=パターンもイチから作りました。でもいちばん重視したのはチノパンが醸し出すアメリカの“匂い”でした」
海老根さんは、輸入されたチノパンと並んでも遜色なく見えるように、製品から感じられるテイストから縫製のニュアンスまで注意深く気を配り、チノパンを作り上げました。
その後、SHIPSのチノパンは、アメリカや日本だけではなく、フランスやイタリアでも製作され、SHIPSに欠かすことのないスタンダードアイテムとして、現在でも熟成を重ねるようにロングセラーを続けています。

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トムソン(THOMSON)は、1946年にアメリカで創業されたトラウザーズブランドです。これはトムソンの75周年を記念してSHIPSが別注したチノパンです。通常のチノクロスよりも強度が強い、通称「ウエポンクロス」を使ったノープリーツ、ストレートシルエットのモデル。生地には樹脂を-16℃で凍らせながら浸透させフラットに美しく仕上げていくという「コールドマーセ」という希少な加工が施されています。生産は国内有数の専門工場で行い、生地や細部にまでこだわった、SHIPSだけのプレミアムなモデルです。77年にSHIPSが日本で初めて扱った当時のトムソンのチノパンを彷彿とさせます。

THOMSON ¥26,400

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SEPTISの玉木朗さん所有のトムソンのチノパンです。玉木さんがSHIPSで購入したトムソンのチノパンは、当時では珍しいベルト付きでコットン100%のモデルでしたが、これは当時玉木さんが働いていた上野・アメ横のる〜ふで購入したものです。「確か77年のSHIPS開店の翌年に買ったものだと思います。SHIPSでは“トムソン”と呼んでいましたが、僕の店の先輩は“ソムソン”、このパンツを扱っていた会社のセールスマンは“サムソン”と呼んでいました」と玉木さんは当時を振り返りました。

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1977年、東京・銀座3丁目に開いたSHIPS 銀座店の写真です。場所は現在のSHIPS 銀座店の斜め向かいで、レンガ造りの外観、1フロア構成のショップでした。「SHIPS 銀座店がオープンして何日目かに行きましたが、(同業としては)やられたぁ、という感じでしたね。見るもの見るもの新しくて、本当にワクワクしました」と玉木さんは話します。店内の写真に映っているのが圧倒的な商品量のパンツです。玉木さんが最初にSHIPS 銀座店で購入したトムソンのチノパンのように、リボンベルト付きで販売されているものもたくさんありました。

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SHIPS 銀座店がオープンした1977年といえば、映画『アニー・ホール』が公開された年です。この映画は、ウディ・アレンが監督したニューヨークを舞台にした作品で、ウディ・アレンと共演したダイアン・キートンの衣裳は「アニー・ホール・ルック」と呼ばれ、ファッションの大きなトレンドのひとつになりました。主演のウディ・アレンはずっとチノパンスタイル。ジャケットの上にミリタリーのフィールドジャケットを羽織り、ボトムスはいつもプリーツが入ったチノパン。当時のニューヨーカーらしい着こなしなのでしょうが、いま見てもまったく古びて見えません。チノパン好き、ファッション好きには必見の映画です。